こちらの記事は犯罪はどうしたら成立するのか 刑法入門総論#2についての記述です。
犯罪の成立要件
犯罪が成立するには、ある行為が刑法の条文が規定する各々の行為にあたらなければなりません。199条殺人罪を例にするならば、〝人を殺した〟という文言にあたる行為をすることで殺人の要件に該当すると言えます。他にも235条窃盗罪では〝他人の財物を窃取した〟という要件があり、これもまた同様です。このように、ある行為が条文の要件に当てはまることを刑法用語で〝構成要件に該当する〟と言います。
刑法199条 人を殺した者は死刑または無期若しくは5年以上の懲役に処する
wikibooksより引用

逆を言えば、ある行為が刑法の条文に当てはまらない、つまり構成要件に該当しなければ、犯罪はこの時点で成立しないと考えます。この構成要件という言葉は刑法を学ぶ上で非常によく出てくるので、必ず頭に入れておきましょう。それでは、構成要件を更にいくつかの要素に分けて考える前に、ちょっとだけ先読みして構成要件についてもう少しだけ掘り下げます。
構成要件該当性とは、犯罪が成立するための要件(絶対的な条件)のうちの1つに過ぎません。他に大きな枠組みで言えば、違法性と有責性の有無を判断し、有りと認められて初めて犯罪が成立します。(まだ覚えなくてOKです)重要なのは、構成要件該当性は一番初めに検証する第1ステージだということです。
刑法の条文の~したら、という行為の部分を構成要件と呼び、その行為に当たれば構成要件に該当し、第1ステージはクリアという認識で大丈夫ですか?
そう、本日は冴えてますね。その構成要件も、単にその行為に当たるかどうかだけで判断してしまうと不当な結果になる恐れがあることから、構成要件の部分をもっと要素分けして考えるのが今の刑法の考え方なのです。 その要素分けを以下から説明していきますね。
客観的構成要件とは
たとえば、199条の殺人罪が成立するためには、まず人を〝刺す〟などの行為が必要になりますね。このように、殺人罪となる危険性を帯びた行為のことを実行行為といいます。また、殺人罪はいわゆる結果犯です。結果が生じなければ、つまり相手が死ななければ殺人罪の構成要件に該当しません。よって、相手の死亡という結果が必要です。そして、その刺すという実行行為が死という結果を招いたと言えなければなりません。これを因果関係があるといいます。
構成要件的結果発生の現実的危険のある実行行為があり、そして結果が発生し、その実行行為と結果との間に因果関係があれば、客観的構成要件に該当すると表現して差し支えないでしょう。
やばい、難しい….。構成要件の結果をもたらす危険性がある実行行為でなければそもそも構成要件には該当しないんですか?
お、鋭い質問ですね。その通りで、例えば犯人が包丁を被害者に向けただけで、結果をもたらす危険性のある行為と言えるでしょうか?おそらく、振りかぶった瞬間こそ危険性のある行為と言えるのではないでしょうか。
難しいですが、もう少し踏ん張って要素の部分である因果関係を掘り下げて見ていきましょう。
たとえば、AはBの殺人計画のもと、ピストルを手に入れBに標準を合わせ、発射しました。その銃弾は外れてBは一命を取り止めたように見えたのですが、実はAから撃たれる前にCがBの飲み物に毒を盛っており、それが原因で死にました。Aは殺人罪に問われるのでしょうか。
・現実的危険性のある実行行為もあるといえる
・結果も、一応死亡しているので結果もありそう。
・しかし、Aが放ったピストルは、Bの死亡には関係がない。よって因果関係が否定される
結論、Aは殺人罪(既遂)の構成要件には該当しない。
えー!じゃこのAはピストルでBを打っておいて無罪なんですか!?
いえいえ、これはあくまでも殺人既遂は問えないだけで、殺人未遂罪には問えるケースです。未遂については後日学びましょう。
上にあげたように、実行行為、結果、因果関係は外観から判断できる要素なので、客観的構成要件要素と呼ばれています。非常に難解な部分なので、下に図にしておきました。頭に焼き付けるなどした方がいいかもしれません。
主観的構成要件要素とは
次に主観的構成要件要素を見ていきましょう。主観的構成要件要素とは、客観的構成要件要素とは違い、行為者の心の要素に着目したものになります。
端的に言うと
- 客観的構成要件要素が存在することを認識していること(構成要件結果発生の認識)
- 殺してしまっても構わないと思っていること(構成要件結果発生の認容)
この2点を刑法用語で〝構成要件的故意〟といいます。外観からは判断できず、行為者の内心に関する問題なので主観的という言葉が使われているのです。
構成要件結果発生の認識とは、自分が行う行為が刑法に規定されるいけない行為であり、これを行ったら悪い結果が発生するだろうと認識していることです。
”こいつをピストルで打ったら胸にあたり、出血し、死ぬだろうな”←この部分が構成要件結果発生の認識になります。
構成要件結果発生の認容とは、”こいつをピストルで打ったら胸にあたり、出血し、死ぬだろうな”←これに対して“それでも構わない”と思っていることです。
主観的構成要件要素はこの故意以外にも過失や行使の目的、不法領得の意思などがありますが、これらはもう少し勉強が進んだらにしましょう。こちら図にしておきましたので参照してください。
離婚についての詳しい解説記事はこちら
⇨⇨⇨https://kotoku-tantei-orange-search.com/category/民法/離婚/
刑法入門総論#1はこちらから
⇨⇨⇨https://kotoku-tantei-orange-search.com/2019/12/05/keihounyuumon1/