
この記事は配偶者からのDVを理由に離婚できるのかについて書かれています。
旦那は普段優しいのですが、私が夫に対して意見をしたり、言い返したりすると「誰に口聞いてんだ!」と声を荒げ、胸ぐらを掴まれたり、投げ飛ばされたりします。過去に一度殴られたのですが、またいつ殴られるのかわからずビクビクしています。このような場合でも離婚はできるのでしょうか?
それは本当に大変でしたね。暴力や虐待行為はたとえ夫婦間でも許されるものではありません。民法770条には直接暴力などの規定はありませんが、第5号の”婚姻を継続し難い重大な事由”に該当する可能性が高いので、離婚理由となるケースが多いようです。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
民法770条1項
配偶者間暴力の実態
内閣府が実施した”男女間に置ける暴力に関する調査”の結果によると、配偶者から日常的に受けていたと回答した人が男性9.7%、男性3.5%いました。
もっと詳しく見ていくと、その中でも身体的暴行を受けたとするのが15.4%、心理的な攻撃が11.9%、経済的圧迫が7.4%、性的強要が7.1%にのぼり、DVと一括りに言っても暴力だけではないことがわかっています。
実際に、家庭裁判所が扱う離婚事件のうち、暴力を振るう、精神的虐待をする、生活費を渡さないが最も多かった申し立て理由で、ますますDVによる離婚が増加しそうな勢いですね。
法律上の暴力の定義とは
夫婦間にで起こる暴力には、身体的暴力の他にも心理的、性的、経済的暴力が含まれます。DV防止法の第1条には以下のように書かれています。
この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ )又はこれに準ずる心 。 身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第二十八条の二において「身体に対する暴力等」と総称する )をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
2 この法律において「被害者」とは、配偶者からの暴力を受けた者をいう。
3 この法律にいう「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み 「離婚」 、 には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が、事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする。
DV防止法第1条
常日頃配偶者からこのような暴力を振るわれていて、生活に支障がある場合はまず警察に相談することをお勧めします。それと同時に、別居するなり離婚するなりの措置を考えるべきでしょう。
離婚原因に該当するか
裁判で離婚を認めてもらうには、”離婚原因”の存在が必要です。夫婦間の暴力は民法770条1項5号の”婚姻を継続し難い重大な事由”に当たります。DV防止法が施行されてい以降、裁判所は比較的この暴力による離婚を緩やかに解釈し、離婚を認めやすくなっているのが現状です。
以下、実際にあった裁判例をご紹介します。
A 身体的暴力による例
夫の暴行から端を発し、妻が缶コーヒーで夫の額を殴打したのに対し、夫が妻の顔面を拳で殴打し、妻の歯が2本折れた事例(名古屋地判平11.11.24判時1728号58頁)
B 夫が妻に対して、髪の毛を掴んで振り回し、電話機を投げつけ、包丁を持ち出して”殺してやる”などと脅かした事例(東京地判平2.11.28判時1384号71頁)
C 精神的暴力による例
夫が妻の両親に不信感を抱き、妻に生活費を渡さなくなった。婚姻費用を負担せず、パチンコに興じ、暴言、暴力を加えた(東京地判平16.10.28LLI/DB【L05934318】)
D暴行による例
性交に際し、妻が夫から必ず靴を履くように強要され、また過度に渡る性交渉を求められた(大阪地判昭35.6.23判時237号27頁)
このように、DVのほとんどが夫から妻に向けられているのが現状です。DVでお困りの方は、まず一人で悩まずオレンジサーチに相談ください。
証拠をとり、提携の弁護士と共に解決に導きます。
