発行株式数、株主平等、利益供与の禁止 会社法入門#4について書かれています。
オレンジ博士、だいぶ株式についてわかってきました。
マナブ君、今日は発行株式数、株主平等、利益供与の禁止についてそれぞれ解説していきますね。
発行株式数の限界
授権資本制度
株式会社は、将来的にいくつまで株式を発行できるかを事前に定款で定めている場合があります。(会社法37条1項)
この発行可能な株式の数を発行可能株式総数と読んでいます。定款で事前に定めておけば、この発行可能株式総数内であれば株主総会の決議を得なくても新規株式を発行することができます。新規の株式を発行する際に、いちいち株主総会を開くことは会社にとって大きな不経済があります。そこで、あらかじめ定款で『◯◯◯◯株まで自由に発行していいよ』としておくことで、経営陣の判断だけで新規株式を発行し、事業資金を集めることができるのです。これを授権資本制度といいます。
え、株式をむやみやたらに発行すると何か不都合があるんですか?資金が増えて会社も株主もメリットしかないんじゃないんですか?
確かに、いくらでも株式を発行できるようにした方が資金が増える可能性もあり、会社としても成長する可能性が上がります。しかし、むやみやたらに発行されると、前から存在する株主の利益を害してしまう恐れがあるのです。発行可能株式総数を超えるような株式を発行する場合は、既存の株主にも新株発行の判断に関与させなければなりません。なぜ既存株主の利益を害してしまうかわかりますか?
うーん、、、全然わかりません。
例えば、現在10000株発行している会社の株式をマナブ君が1000株所有していたとしましょう。会社に対する影響力も10%ありますね。しかし、突然会社が『本日、追加で100000株を新規で発行します』となったらどうでしょうか。会社には大量の資金が入りますが、マナブ君の株式保有率は最悪10%から0.9%ほどになってしまいます。これでは影響が大きすぎるので、定款で定めた発行可能株式総数を限度に取締役の判断でやらせようよって話なのです。
1 発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。
2 発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる。
3 設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。
会社法37条1項
株主平等原則
まずは会社法109条を見てみましょう。
1 株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第105条第1項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
3 前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。
会社法109条
株式とは、社員としての地位を均等に切り分けたものなので、持っている株式の数に応じて平等に取り扱わなければなりません。
これを株主平等原則といいます。ですので、10株持っているAさんと、10株持っているBさんは会社に対して同等の影響力がありますが、100株を持っているCさんはAさん、Bさんよりも10倍強い影響力を持っているのは当然のことになります。
会社法109条2項の意味は、公開会社でない株式会社(全ての株式に譲渡制限がついている会社)にのみ適用される条文で、
一 剰余金の配当を受ける権利
二 残余財産の分配を受ける権利
三 株主総会における議決権
これらをその株式ごとに変更して与えることを許しています。
例えば、Aさん所有の株式は、剰余金を受け取る権利はないが、残余財産は他の普通株式の1.5倍もらえるという特別な規定ですね。
しかし、剰余金請求権と残余財産請求権の二つを全く0にする定款の規定は無効であるとしています。(会社法105条2項)
利益供与の禁止
株式会社は、株主が権利を行使するにあたって、株主に利益を供与してはならないとされています。(会社法120条1項)
これを利益供与の禁止といいます。
例えば、会社が筆頭株主に対して『次回の株主総会では◯◯という人物を取締役に選任したいと思うので、どうか投票してくれませんか。これ、1000万円です、お納めください』
これが利益供与の典型例です。利益供与を禁止する理由の一つは、会社の不健全化を防止する狙いがあること、もう一つは会社財産の浪費を防止するためにあります。